もう15年以上前になりますが、金融機関の営業担当者であった頃、一度だけ
債権者集会に債権者として出席したことがあります。

上司「田中、債権者集会出てくれる?」(当時東京勤務)
私「出たことないですよ。何するんですか?そもそも何の案件ですか?」
上司「座っとけばいいよ。勉強になるよ。資料はこれ読んどいてね。
対外秘だから部内限りね ニコッ。」

とりあえず資料に目を通すと、債務者はパチンコ店向けソフトウェアの開発を行っている会社でした。
債権内容を頭に入れ、債権者の招集通知書をもって指定の時間、指定の場所へ。

10分前に会議室へ入ると、30人規模の部屋でしたが、私しかいない。
前には、弁護士と債務者の方(私は当然会ったこともない)が黙って座っています。

私1人気まずくなって、とりあえす配布されている資料を見て気を紛らわそうとしました。
確か、清算貸借対照表だと思います。

記憶が不確かですが、現金0円と債務超過額4千万円だったことははっきり記憶しています。
当時、自分の会社の債務が2百万程ありました。
私もまだ入社して2年目でしたので、「どうやって回収するんやろ?」と悩んでおりました。

そうこうしていると弁護士が「時間になりましたので始めます」と声をかけました。
未だに私1人です。
私は「このままでいいんかな?出席も取らんってどうなっているんやろ。」
と1人焦ってバタバタとメモの準備を行いました。

弁護士は淡々と、清算財務諸表の説明を5分程度行い
「何か異議はありますか?(と聞かれた記憶)」と声をかけました。
異議もへったくれもありません。
私は何も知らないのです。当然、沈黙。

すると5秒ぐらいで弁護士が「では閉会いたします」と債権者集会は終了してしまいました。
どうやら、当社の債権を回収できないことが決まったようです。
私は何も言えませんでした。

会社に帰るまでの道が憂鬱でした。
当時スマートフォンなどありませんでしたから、先ほどの会議が
何を意味するかを調べることもできません。
無性に腹が立っていたので、ドトールコーヒーでゆっくりしてから帰ったことを覚えています。

帰社して上司に報告を入れました。
「うちの債権、回収できなくて終わりました。これでよかったんでしょうか?」
と聞くと上司は
「いいよ。破産だから何もできないし。田中以外誰かいた?誰もいなかったんじゃないの?
実は清算財務諸表が欲しかったんだよ~審査部うるさいでしょ。」とのこと。

どうやら資料を取りに行くのが面倒くさかったようです。
後で缶コーヒーをご馳走してもらいました。

私は、清算財務諸表の現金と債務超過額の他に、
債務者の方のなんとも虚ろな目が記憶に残りました。
その時、私は「債権回収の業務を行うのは嫌だな」と思ったことを鮮明に覚えています。
まさか数年後、債務者の実務責任者として、債権者との激しい交渉を
4年間も行うことになるとは全く考えていませんでした。



資金調達コンサルティング|ファイナンスアイ
貴社の資金調達を成功報酬で対応します。
関西を中心に日本全国対応しています。
http://www.financeeye.net/
TEL:06-7878-6657(土日祝も対応)